祭祀承継者の決め方

墓じまい

「墓じまい」をする場合、祭祀承継者さいししょうけいしゃを決めておくことは重要です。なぜなら祭祀承継者とはお墓、仏壇、遺骨といった祭祀関連の処分一切の権限をもっているからです。

祭祀承継者とは?

祭祀承継権とは、先祖供養や家族の祭祀(墓や仏壇の管理、法要の実施など)に関わる責任や権利を引き継ぐものです。民法897条で規定されており、祭祀財産(墓地、仏壇、位牌など)は相続財産とは別と認識されています。

祭祀承継権と相続権は、どちらも法律で定められた権利で似てますが、その目的や性質には明確な違いがあります。

権利名財産財産例
祭祀承継権祭祀財産墓、仏壇、遺骨など
相続権相続財産家、土地、現金など

祭祀財産は相続財産とは異なり、相続人全員の共有財産とはならず、家族内で決定した祭祀承継者が維持・管理・処分の一切の権限を持つことも可能です。

祭祀承継者の決め方

一般的な慣例では直系の長男や長女が自動的に引き継ぎ、それらが亡くなると次男、三男、次女、三女といった流れで兄弟姉妹が継いでゆき、最後の承継者の子孫がそれを引き継いでゆくというのが一般的な承継方法です。

この権利は祭祀を維持し、家族や一族の伝統を守る目的で、金銭的な価値より精神的・文化的な側面が重視されるため承継者の決定には遺言や協議によって指定されるのが一般的ですが、決着しない場合は家庭裁判所に申し立てすることで1~3ヶ月程度で誰が祭祀承継者にふさわしいか決定して貰うことも可能です。

家庭裁判所へ申し立てをするのはどなたでもできます。個人で申し込んだ場合は印紙代800円と戸籍謄本等を揃える費用数百円、郵送料など1万円以下で申請できますが、不備があると受理されませんので、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に依頼した方が確実です。

書面に残しておきましょう

祭祀承継者は口頭でも有効とされていますが、墓じまいの場合は先祖の遺骨を移動したり処分したりする重要な責務を伴っているので、可能な限り書面にして残しておいた方が、後々のトラブルに発展することを防げると思います。

書面は自由形式でも良いと思いますが、以下の内容を含めて親族直筆の署名・押印を貰っておいた方が良いと思います。

  • 祭祀承継者は誰か?(複数でも良い)
  • 祭祀承継権に含まれる物・事のリスト
  • 賛同した者の氏名・押印
  • 書類を作成した日付

おまけ「承継しょうけい」と「継承けいしょう」の違いとは?

読んでいて「ん?」と気になった方もいらっしゃると思います。承継と継承、似てますが意味が異なります。

簡単に言うと「承継」は事業や精神、義務といった抽象的で無形なことに対して、「継承」は身分や財産、権利や義務といったやや形のある「物」になります。

では完全に余談ですが、一子相伝、北斗神拳!はどちらだと思いますか?

作中で北斗神拳は「伝承者」と言っています。

伝承とは「言い伝える」という意味があるので技術を伝えたから継承者なのかな?とも思いましたが、ファン的な解釈だと、技術もさることながら精神論を伝承してきたと考えるので「承継者」なのかもしれません。

祭祀承継者は誰でもなれるのか?

実は祭祀承継者は親族でなくとも誰でもなれます。身寄りが無く、最後の看取りがアパートの大家さんで、遺品として残された遺骨を処分するにあたり家庭裁判所に申し立てし、大家さんが祭祀承継者となることも可能です。

祭祀承継権は相続権とは別物として判断されますので、親族の許可を取る必要もないのですが、万が一何か起きた際に、親族から訴えられた場合は弱い立場になりやすいと思いますので、親族以外の第三者が祭祀承継者となる必要がある場合は、やはり親族か家庭裁判所の認定を受けておいた方が無難だと思います。

祭祀承継者になるときの注意点

前述した通り、祭祀承継権の中には墓地や仏壇、遺骨といった祭祀全てに関わる権利があります。

この中で、墓地だけとか、仏壇だけといった限定権限一部だけの承継)を望む時は、その旨もきちんと書面化しておいた方が良いと思います。

そうしておかないと、遺骨だけ引き取ろうと思ったら、後から墓地や仏壇まで引き取るように言われたりすることもあるかもしれません。

まとめ

祭祀承継者は財産権の継承と違って争うことが稀ですが、権利を明確にしておかないと後々大変なことになりかねませんので慎重さが必要です。

最近では、身寄りの無い方の遺骨を友人が祭祀承継者となり海洋散骨を申し込まれるケースが増加してますが、理論上は問題ありませんが、必ず「本当に親族がいないかどうか?」を戸籍謄本などを辿って調べてからお申し込みされることを強くお勧めします。

この記事が皆様のお役に立てたなら幸いです。

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