墓じまいの流れはいろんな方法があります。石材店は発信する墓じまいは石材店に都合良く書かれており、相場も何だか高めに書かれています。
過去100件以上、遺族と共に墓じまいを観てきた筆者の経験から本気で消費者に役立つ「墓じまいの流れ」を考えてみましたのでご参考ください。
祭祀承継者が誰かを確認する
墓じまいができるのは祭祀承継者のみです。
祭祀承継者とは、お墓や遺骨、仏壇など「祭祀」の全てに対して権限を持った一族の責任者です。遺族全員でも良いですし、話し合いができていれば1名でもその権利者になれます。
似たような権限に「相続権」がありますが、法律上、相続権と祭祀承継権は別物と認識されており、相続で全てを奪われても祭祀承継権だけは守られるほど権利は強力です。
祭祀承継権は「なんとなく誰か」に決まっていることが多く、相続に併行して第一子がその役割を担っているケースが多いです。
墓じまいの際には、先ずこの祭祀承継者が誰なのか?を確認しておくことが重要です。できればお墓の解体や遺骨の処分といった重要な任務を負いますので、書面を取り交わして明確化しておいた方が良いと思います。
もしもあなたが祭祀承継者でないのであれば、墓じまいを進行することはできません。
親族に墓じまいの同意を得る
あなたが祭祀承継者の場合、一存で全てを決定できるほどの権限を有していますが、後々のトラブル防止の為に関係親族の同意を得ておくことをお勧めします。
言った言わないを防ぐためにきちんと「同意書」として書面化し、実印の押印が難しい場合は直筆署名をして貰うくらいの準備は必要だと思います。
同意を得るのは自分と前後一世代の親族(一親等)程度で良いと思います。
お墓の位置や遺骨の状態を把握しておく
墓じまいの費用を見積もりしてもらうためには墓石の状態や遺骨の数量など、正確な情報が必要になります。
現地の石材店や親族に事前確認してもらうことなどもできますが、石材店の事前調査はいい加減な事が多く、墓じまい当日に知らない遺骨が出てきた!という実例もありますので、ご自身でしっかり確認されることをお勧めします。
確認の際には墓地管理者に許可を得る必要がありますので、この際に管理費の未納がないかも確認しておき、もしも未納分があれば支払っておきます。滞納が無ければ後々の交渉が楽になります。
石材店を決める
墓石の解体撤去は石材店の仕事になります。
お寺によっては指定石材店がありますので先ずはお寺に確認します。お寺は指定石材店からいくらか貰っているので何をどうあがいても指定石材店以外の利用はできません。
指定石材店がない場合はどの石材店に依頼しても大丈夫ですが、解体場所から遠いと高額になりますので、墓地の近くの石材店2~3社から見積もりを取って選びます。
この時、先に調べておいた墓地の場所や墓地の状態などの事前調査が役立ちます。
墓石の状態を確認する
墓じまいの費用算出に墓石の位置は大きく左右します。
墓石の前までクレーン付きの車両が入れれば安くなりますし、人海戦術で運ぶしかなければ高くなります。ここをしっかり把握しておくと石材店のザックリ見積もりを指摘することもできます。
また、外柵付きか、基礎ありか、石碑ありか?なども細かく確認し、できれば様々な角度から写真を撮っておきましょう。車両が入れそうな場所から墓石までの写真も撮っておきましょう。
誰の遺骨があるのか確認しておく
お墓には誰の遺骨を埋蔵したか、墓石の裏面や周囲の石版に刻名する習わしがありますので先ずはそちらを確認してゆきます。
注意すべきは戦前よりある先祖代々のお墓です。戦時中の混乱期に刻銘する余裕なく埋蔵だけされているケースが多く見られますので実際にお墓の中を確認する必要があります。
お墓の下を唐櫃と呼び、遺骨はココに埋蔵されています。(以下カロート)
ほとんどのお墓は勝手に遺骨を出し入れできないように重たい石板で閉じられており、場合によってはコーキング材で密閉されていますので素人では開けられません。
墓地管理者に「埋蔵されている遺骨の詳細を確認したい」という事を伝え、石材店に依頼して遺骨の状態を確認します。
以下の項目を確認し記録しておきますが、誰の遺骨なのか判らない事も多いので、その場合は仕方が無いので「ご先祖様」として仮記録しておきます。
(1)遺骨の数量、骨壺の大きさ(直径)
(2)誰の遺骨か?
(3)遺骨が火葬してあるか?
(4)遺骨以外の物が埋蔵されていないか?
(5)記録にない遺骨は入っていないか?
(2)誰の遺骨か調べる方法は骨壺の側面や蓋の裏などに記名がないか確認します。中には蓋を開けたら骨壺の中に名札が入っていたということもあります。
戦時中に埋蔵された骨壺には遺骨の代わりに石が入っていたり、土や砂だけだったり、小さな骨壺に写真だけが入っていたりすることもあります。
(3)未火葬を判断するのは石材店でも難しいかもしれませんが、大きな茶色い瓶に入っていたり、遺骨がふにゃふにゃしていたら未火葬の可能性があります。髪の毛用の櫛が入っていたら未火葬の確率がグンと上がりますので気をつけてください。
(5)は信じられないかもしれませんが稀にあります。当時の祭祀承継者が「入るところないならうちの墓に入れてあげるよ」的な流れで全く知らない方の遺骨が入ってることがあります。
できれば写真を撮っておいたり、その場でマジックで記名しておくなどしておきましょう。そのうえで遺骨の現状をリスト化しておきます。
遺骨の最終的な行方を決めておく
遺骨の数量などが把握できたら、その遺骨の最終処分方法を決めます。
実は墓じまいの費用を安く抑えることができるかどうかは、ここで何を選択するかどうかで大きく変わります。
かつてはお世話になった菩提寺へ永代供養に出す一択でしたが、現在は安価な自治体の合祀墓に改葬したり、海洋散骨に出すこともできますので選択肢は4つほどあります。
費用面の詳細は別ページで解説しますが、費用の高い順に紹介させていただきます。
菩提寺で永代供養(超高価)
菩提寺や石材店は慣習に従い永代供養を勧めてくると思います。費用は平均すると1体あたり15万円ほどですが、高いところは1体あたり70万円しますので、遺骨の数が多いときなどは莫大な費用がかかってしまいます。
多くの場合、永代供養とは言いますが、地下にある納骨堂に半永久的に埋蔵するだけなので遺骨が自然に還ることは99%ありません。
民間の樹木葬に改葬する(高価)
従来の墓石タイプのお墓を墓じまいして樹木葬に改葬する方もいらっしゃいます。
「樹木葬なら自然に還る」と信じて樹木葬を選ぶ方が多いのですが、多くは遺骨を円筒形の塩ビパイプ内に埋蔵したり、陶器製骨壺のまま埋蔵している場合、遺骨が土に還ることは半永久的にありません。
墓じまいとして樹木葬を選ぶ場合は、遺骨の埋蔵方法を詳しく調べてからにしましょう。
遺骨を粉骨して水溶性の紙袋等に入れ、土中ダイレクトに埋蔵する方法のところなら100年後くらいには土に還っているかも知れません。この場合なら自然回帰率は約60%くらいではないでしょうか?
自治体の合祀墓へ改葬(安価)
最近の人気は自治体が用意した合祀墓への改葬ですが、まだ受入体制の整った一部の自治体しか募集しておらず、他県からの改葬や居住者以外は応募できなかったりしますので事前に審査の確認が必要です。
また、多くの場合は抽選待ちになり、当選してからの墓じまいとなるため長いと2~3年は待つことになります。
合祀費用は、例えば東京都の多磨霊園(樹林墓地3号基)であれば、9.1万円/体で、粉骨状態であれば3万円/体で合祀することができますので菩提寺の永代供養と比較すると粉骨費用を含めても約1/3程度の費用で済みます。
千葉市の平和公園樹木葬などは、粉骨費用込みで4万円で埋蔵できますが、市民があまり知らないので抽選無しで入れますのでチャンスです。
ちなみに自治体の合祀墓はコンクリートでできた円筒形のカロート内に蓄積埋蔵になりますので、こちらも遺骨が自然に還ることは99%ありません。
海洋散骨する(超安価)
海洋散骨は遺骨の自然回帰率が最も高いです。海に撒いた遺骨は短期間であっという間に自然に還ります。
まだ「海洋散骨って違法じゃないの?」と思われている方がいますが、2021年には厚生労働省、2023年には国土交通省なども散骨業者にたいしてガイドラインを発表し、業としての散骨を認めておりますので安心して利用することができます。
→散骨の法律と条令について(外部)
ただし、北海道で起きた沈没事故の影響で、旅客船に対する安全対策などについては年々厳しくなっておりますので、遺族が船に乗って海洋散骨する場合は装備を調えられる船舶が減少してくる可能性があります。
海洋散骨の費用は、遺族が船に乗って散骨する「乗船散骨」と、海洋散骨をプロに委託する「代理散骨」の2種類があります。
乗船散骨はお葬式と同じでセレモニー的に実施され、使用する船も豪華な場合が多いので高価になります。映画やドラマで観る散骨はこちらのタイプです。
費用は遺骨の数量に関係なく総額でいくらという計算になり、船の大きさや食事の有無など積算要素は様々なので、相場は20万円前後です。
代理散骨の場合は粉骨から散骨までプロに委託してお任せになりますので、遺骨を引き渡した後は散骨が実施されるのを待つだけになります。
1件あたりいくらという積算方法で、数名分集まったら出港しますので費用相場は粉骨料金も含めて3万円/件前後とたいへん安価で済むため、最近の墓じまいは散骨代行を選ぶ方が多いです。
特に遺骨の量が多く、墓じまい費用を安く抑えたいときなどは散骨代行一択になるかと思います。
墓地管理者へ墓じまいの意思を伝える
遺骨の行方をどうするか決めたら墓地管理者に「墓じまいをする意向」を正式に伝えます。
墓地管理者が公共霊園などの場合は何の問題もなくすんなり手続きが進むと思いますが、長年檀家だったお寺だと難航することがあります。
檀家さんの数で成り立っているお寺はなんとか離檀を止めようとするかもしれませんし、最後に閉眼供養と永代供養を勧めてくるかもしれませんが、ここで管理費の滞納などがなければ比較的すんなり交渉は可能です。本気で揉めそうな場合は弁護士に依頼するとあっという間に話が進みます。
改葬許可証が必要か確認しておきましょう
墓地管理者に通知した際に、お墓から遺骨を取り出すにあたって改葬許可証が必要かどうか確認しておきます。改葬許可証の有無は遺骨の行き先をどうするかで決まりますので、しっかりと決めておく必要があります。
見積を取って最終的な予算を確定する
①解体撤去の見積もり
②閉眼供養の見積もり
③海洋散骨や改葬の見積もり
上記3種類の見積もりが揃い納得できる費用であれば正式な墓じまいスケジュールを決めて実行します。
墓じまいに最適な時期はお寺や石材店が暇な12月や1月~2月上旬、天候の良い5月、10月~11月です。逆に避けるべきは3月と9月のお彼岸時期、梅雨時の6月、猛暑の8月です。
閑散期に実施すると割引なども比較的応じてくれます。
(閉眼供養を行う)
これは仏教だけですし、檀家さんだった場合は必須ですが、公共霊園の場合は閉眼供養や魂抜きなどを行わない方もいらっしゃいます。
閉眼供養は墓じまい当日にお坊さんがお墓の前で行う事が多いですが、猛暑の時期などは墓じまい前にお坊さんだけが済ませていたりすることもあります。
気になるお布施は10万円前後と言われてますが、最近の相場は5万円前後です。ちなみにお布施は閉眼供養の後で渡すのが一般的ですが、金額が多いときは実施前に渡した方が良いようです。
→閉眼供養お布施の相場(外部)
遺骨の撤去を行う
お墓から遺骨を取り出す作業は石材店のお仕事ですが、なるべく祭祀継承者が立ち会った方が良いと思います。
カロートから取り出した遺骨には水がたっぷり含まれていると思いますので、骨壺を斜めにして見ず向きをした後、キレイに拭いてから墓石の前に並べられます。
遺骨の引取などがある場合は、その場でどなたの遺骨だとか状態などを確認した後、業者によって引き取られてゆきますが、引取がない場合はビニール袋や風呂敷などに包んで遺族の手で運び出します。
墓石の撤去確認を行う
カロートから全ての遺骨が取り出されたら石材店によって解体工事が始まります。この作業に祭祀承継者の立会は不要です。
墓石の解体は上物石材の解体撤去、基礎の解体の後、更地状態になります。公共霊園などはカロート部分だけを残す場合もあります。
墓地管理者に挨拶する
墓地の原状回復が完了したら、墓地管理者に報告し、確認した後返還は完了となります。
親族に報告
墓じまいが終了し、遺骨の最終的な処分が済んだら親族に対してその旨を通知して墓じまいは終了です。
以上が墓じまいの流れになります。
それぞれの項目をもっと詳しくご覧になりたい方はリンク先などを辿ってみてください。